公開日:2026/2/25

最終更新日:2026/2/25

エンボス凹凸で空気層形成|断熱結露対策スペーサーフィルム徹底解説

空間・空気層の付与のブログタイトル

フィルムに「空気層」を持たせられたら、もっと課題が解決しやすくなるのに。
窓の断熱や結露対策、温度変化を抑えたい容器やダクト、製造工程で部材同士を守るスペーサーや緩衝材など、現場には「わずかな空間を安定して保ちたい」場面が多くあります。

ところが、平らなフィルムは面で接触しやすく、貼った瞬間に空間が消えてしまったり、柔らかい素材だと押されて潰れてしまったりします。そこで活躍するのが、エンボス加工によって凹凸を付与し、接触の仕方そのものを変える方法です。凹凸が支点となって空間が残り、そこにできた空気層が断熱や結露抑制、クッション性といった効果につながります。

本記事では、まずエンボス加工の加工方法を簡単に整理したうえで、空間・空気層の付与用途として合同樹脂工業が提案するスペーサーフィルムを軸に、仕組みや効果、設計の考え方、用途例、検討の進め方をまとめます。

エンボス加工フィルムで可能な参考用途写真イメージ
エンボス加工フィルムで可能な参考用途写真イメージ

1.エンボス加工とは?加工方法を簡単に紹介

エンボス加工とは、フィルムやシートの表面に凹凸をつくり、意匠性や機能性を付与する加工です。インクや添加剤で後から性能を足すのではなく、表面の「形」を設計して、光や接触、空気の挙動をコントロールできる点が大きな特長です。

加工方法として代表的なのがロールtoロール方式です。柄を持った金属製のエンボスロールと相手側ロールの間にフィルムを通し、加熱と圧力によって凹凸形状を連続的に転写します。工程としては、フィルムを送り出し、賦形しやすい状態に温度を整え、エンボスロールで押し当てて形をつくり、冷却して安定させたうえで巻き取る、というイメージです。

ロールtoロールでのエンボス加工の模式図

このとき重要になるのが、凹凸の「高さ」「ピッチ」「形状」「配列」です。ここを変えることで、光拡散や剥離性、滑り性、そして本記事のテーマである空間・空気層の付与といった機能を、用途に合わせて作り分けられます。
ここから先は、空気層の付与に焦点を当てて、もう少し具体的に見ていきます。

2.空気層の付与とは?なぜ空気が効くのか

空気層の付与とは、フィルムと対象物の間に意図したすき間をつくり、その空間に存在する空気の性質を利用して効果を得る考え方です。空気は熱を伝えにくい性質を持つため、層として安定して保持できれば、熱の移動を緩和しやすくなります。結果として、外部温度の影響が伝わりにくくなり、保温・保冷の補助や温度変化の抑制に寄与します。

エンボス形状による空間付与イメージ画像

結露に関しても同様で、結露は表面温度が下がり、露点を下回ることで発生します。空気層があると、外気側の冷えが室内側へ伝わりにくくなるため、ガラスや内装側の表面温度低下を抑えやすくなります。その結果、結露が起きにくくなり、窓周辺の水滴やカビといった二次的なトラブルも抑制しやすくなります。

ただし、ここでのポイントは「空気層を作ること」そのものよりも、「空気層を潰さずに維持すること」です。空間を支える構造がなければ、押圧や貼り合わせの力で簡単に潰れてしまいます。そこでエンボス加工の凹凸構造と、剛性の高い基材が効いてきます。

3.エンボス加工で空気層が生まれる仕組み

平らなフィルムは面で接触しやすく、対象物に密着すると空間がほとんど残りません。一方で、エンボス加工フィルムは表面に凹凸があるため、接触が点や線になりやすく、凹凸の谷部にすき間が残ります。この残ったすき間が空気層となり、断熱や結露抑制、クッション性のベースになります。

さらに、凹凸は単なる模様ではなく、空間を支える「構造」です。凹凸の高さが大きいほど空間は作りやすくなりますが、その分、貼り合わせや外観、段差追従性とのバランスも必要になります。ピッチが細かいと支点が増え、面圧分散や形状保持に寄与しやすくなりますが、用途によっては空気の逃げ方や貼り合わせ条件にも影響します。つまり、空気層の性能は凹凸の設計そのものに左右されます。

4.スペーサーフィルムの特長:二軸延伸PET×凹凸の剛性

エンボスフィルムによる空間付与(スペーサー)

空間付与用途でよくある悩みは、素材が柔らかくてすぐ潰れる、破れやすい、薄くしたいのにコシが出ない、といった点です。スペーサーフィルムでは、剛性のある二軸延伸PETフィルムを基材に用い、そのコシと強度を活かしながらエンボス凹凸を付与することで、空間を維持しやすい構造を狙います。

合同樹脂工業では、二軸延伸PETを素材として用いることで、柔らかい基材では難しいダイナミックな凹凸形状のフィルム作成を可能とし、その凹凸がつくる空間をスペーサーや緩衝材として活用できます。基材がしっかりしているほど凹凸が支点として機能しやすく、押されても空間が残りやすくなるのが強みです。

基材厚みはPETで12μ~250μまで対応実績があり、他素材では~4mmまで対応実績があります。薄肉化と剛性確保を同時に狙いたい場合にも検討しやすい領域です。また、100種類を超えるエンボスロールを保有しており、マットや格子など多様な柄から用途に合わせた選定が可能です。必要に応じて新版設計からの対応もできます。加えて、コーティングや印刷との組み合わせにも対応できるため、空間付与にプラスして表面機能や意匠性まで含めた提案につなげられます。

5.空間付与で得られる効果:断熱・結露防止・クッション性

空気層を付与すると、具体的に何が変わるのか。代表的な効果を、用途に結び付けて整理します。

5-1.断熱性能の向上・保温効果

スペーサーエンボスフィルムをガラス表面に貼ることで、ガラスとの間に空気層を作ることが可能になります。この空気層が断熱材のように働き、室内温度の変化を緩和する方向に寄与します。冷暖房効率の改善が期待でき、温度変化をできるだけ小さくしたい容器やダクトなどの用途と組み合わせても、外部温度の影響を抑える効果が見込めます。

5-2.結露防止・結露抑制

冬場の窓において、ガラス内側が冷えて結露が発生するケースは少なくありません。空気層があると、ガラスの冷えが室内側へ伝わりにくくなり、結果として結露が起きにくくなる方向に働きます。水滴の発生はカビや腐食の要因にもなるため、結露の抑制は室内環境の維持にもつながります。

エンボス加工の効果_結露防止イメージ

5-3.フィルムのコシ感・剛性の向上

エンボス形状が縦・横・斜めに配列されることで、表面構造としての強度が増し、同じ厚みのフラットフィルムでは得られないコシを持たせられる場合があります。薄いフィルムで剛性を確保したい、取り扱い性を改善したい、といった場面で有効です。

5-4.クッション性の付与

立体的な凹凸は、押圧を受けた際に変形の余地を持つため、緩衝材のように働きます。工程材として使用した場合、部材同士の擦れや傷を抑える方向に寄与し、スペーサー用途や保護用途で効果が期待できます。

エンボス加工の効果_接触面積の低下

5-5.滑り性の付与(摩擦軽減)

エンボス加工で凹凸を付与すると、対象物との接触が点や部分接触になりやすく、接触面積を低減できます。その結果、摩擦が下がり、フィルムや部材が滑りやすくなります。搬送時の引っ掛かり低減や、重なったフィルムの取り上げ性改善など、工程性の向上に寄与する場合があります。

エンボスフィルムの性能_滑り性向上イメージ

5-6.密着防止・ハンドリング性の改善との相乗

凹凸は接触面積を下げやすく、過密着を避ける方向に働くことがあります。これにより、重なったフィルムの取り上げ性が改善したり、搬送時の貼り付きが起きにくくなったりするケースがあります。空間付与を主目的にしつつ、工程性の改善も同時に狙えるのが、表面構造設計の面白さです。

エンボス加工の効果_接触面積の低下

6.設計ポイント:柄・高さ・ピッチ・基材・貼り合わせ

空間付与用途では、同じ「空気層を作りたい」でも、最適解が用途条件によって変わります。検討をスムーズにするためのポイントを整理します。

まず大前提として、基材の剛性が空間保持に直結します。空間を潰れにくくするには、凹凸を支えられる素材を選ぶことが重要です。二軸延伸PETはコシと強度のバランスに優れ、空間付与用途と相性が良い選択肢のひとつです。

次に柄の選定です。点接触寄りの柄は空間が残りやすく、格子系は形状安定のバランスが取りやすいなど、目的により向き不向きがあります。断熱を強めたいのか、緩衝を強めたいのか、密着防止も同時に狙いたいのかで、候補柄の優先順位が変わります。

凹凸の高さとピッチも重要です。高さを上げれば空間は取りやすくなりますが、貼り合わせ条件によっては凹凸が埋まりやすくなることがあります。逆に細かいピッチは支点が増えて安定しやすい一方、用途によっては空気の逃げ方や表面の触感に影響します。ここは実際の条件で比較評価しながら詰めるのが確実です。

エンボスパターン(ダイヤ・格子)
エンボスロール写真(格子・クロス柄)

特にウィンドウ用途など貼り合わせが絡む場合、粘着剤の流動や貼り合わせ圧、養生条件によって、空気層が潰れることがあります。評価では「材料」だけでなく「貼り方」まで条件として押さえると、実運用での再現性が上がります。

また、空間付与に加えて、耐擦傷や意匠性、後工程適性を満たしたい場合は、コーティングや印刷との組み合わせも検討対象になります。必要な機能を整理し、優先順位をつけたうえで設計することが、近道になります。

7.用途例:ウィンドウフィルムから工程材、断熱テープまで

空気層付与型のエンボスフィルムは、断熱や結露に限らず、工程材や保護用途まで幅広く展開できます。

代表例がウィンドウフィルム素材です。窓に貼り合わせることで断熱層が設けられ、冬は暖気を逃がしにくく、夏は外からの熱を軽減し、冷暖房効率の向上が期待できます。結露の抑制にもつながり、水滴やカビの発生を防ぎ、快適な室内環境を保ちやすくなります。さらに、用途によっては光の拡散や視覚遮断など、意匠的な付加価値も同時に検討できます。

断熱テープ用素材としての用途もあります。エンボス凹凸が空気層を形成し、熱伝導を抑えながら保温・保冷効果を高める考え方で、テープ素材として幅広く使用されています。用途によっては航空・宇宙用途での採用実績もあります。

また、温度変化を抑えたい容器やダクトと組み合わせ、外部温度の影響を最小限に抑える用途も考えられます。断熱材ほど厚くできない、施工性を重視したい、といった条件下で検討されるケースがあります。

工程用合紙フィルムとしては、部材の擦れ防止、傷防止、密着防止、間隔保持といった役割が期待できます。凹凸が支点となり、部材同士が直接当たりにくくなることで、外観不良や歩留り改善に寄与する可能性があります。

緩衝材・保護材としても、凹凸がクッションとして働くため、薄い構成でも一定の緩衝性を持たせたい場面で有効です。

8.よくあるご質問(FAQ)

Q1.空気層はどのくらいの厚みを作れますか?

A.凹凸の高さやピッチ、基材、貼り合わせ条件で変わります。同じ柄でも貼り方や圧力条件で空間の残り方が変わるため、用途条件に合わせた最適化が重要です。

Q2.薄いPETでも空間付与は可能ですか?

A.可能です。PETは12μ~250μまで対応実績があり、薄い基材でも凹凸設計によりコシを出しやすいのが特長です。狙う剛性や後工程条件に合わせて選定します。

Q3.断熱や結露防止は必ず効果が出ますか?

A.効果の出方は温度・湿度・取り付け状態・層構成に依存します。評価条件を揃えた比較試験で、差が出る設計を見つけることが確実です。

Q4.柄は選べますか?既存柄で試せますか?

A.100種類以上の柄から用途に合わせて選定できます。まずは既存柄でサンプル評価を行い、必要に応じて調整や専用設計を検討します。

Q5.コーティングや印刷も組み合わせできますか?

A.可能です。空間付与に加え、表面機能や意匠性、後工程適性を満たすために組み合わせを検討できます。

9.試作・評価の進め方:サンプル活用と相談のコツ

エンボス加工の対応力について

空間付与用途は、理屈だけでは評価が難しく、実際の条件で差が出ます。進め方としては、まず困り事を整理し、用途条件を揃えたうえで複数柄を比較するのが有効です。

たとえば、コシ感がない、すぐ破れる、薄くしたい、断熱や結露、擦れや密着、搬送で困っているなど、どの課題を最優先するかを決めると、柄選定の方向性が定まります。次に、対象物や使用環境、貼り合わせ有無、圧力条件、求める効果の優先順位を整理します。ここまで揃えば、A4サンプルで比較試験を行い、差が出る方向性を掴みやすくなります。

結果を見ながら、凹凸の高さやピッチ、基材厚み、貼り合わせ条件、必要に応じてコーティングなどを調整して、狙い性能へ寄せていきます。既存柄で成立する場合はスピーディーに、専用設計が必要な場合は段階的に詰める、という考え方が現実的です。

まとめ

エンボス加工は、ロールの凹凸を熱と圧力でフィルムへ転写し、表面構造を設計できる加工です。空間・空気層の付与用途では、凹凸が支点となって空気層を形成し、断熱・保温、結露抑制、クッション性、スペーサー機能を発揮します。

二軸延伸PETの剛性を活かしたスペーサーフィルムは、空間を潰れにくく保持しやすい点が特長で、ウィンドウ用途の断熱・結露対策から、工程材、断熱テープ、緩衝材まで幅広い用途で活用が期待できます。

空気層で課題を解決したい、薄肉化しながらコシを出したい、結露や断熱で困っている。そうした検討の入口として、まずはサンプルで比較評価し、用途条件に合わせて最適化していくことが近道になります。スペーサー用エンボスフィルムの検討やサンプル評価については、お気軽にご相談ください。

最後に

今回のブログ内容はいかがでしたでしょうか。

製品の信頼性を高めたい、工程を効率化したい、特殊な素材に適した離型材を探している──そんな課題をお持ちの方は、ぜひ一度、合同樹脂工業の技術をご検討ください。素材の特性とエンボスパターンの組み合わせによって、貴社の製品・工程に最適なカスタマイズをご提案いたします。

本記事が皆さまの製品開発や工程改善のヒントとなれば幸いです。

その他のブログについてもぜひご覧ください。
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執筆者

本記事は、半世紀以上にわたりエンボス加工専業で取り組んできた合同樹脂工業の技術知見をもとに解説しています。 
 
半世紀以上の経験から、ご要望に応じた素材や柄、使用方法をご提案いたします。

サンプルのご依頼も可能ですので、是非お気軽にご相談ください。

監修者:合同樹脂工業株式会社 代表取締役 長木 翔吾 

合同樹脂工業社長写真

一橋大学商学部卒。経営コンサルティング会社にて製造業を中心とした経営支援業務に従事した後、合同樹脂工業株式会社に入社。 
プラスチックフィルムへのエンボス加工を主力とする同社にて、製造現場・品質管理・技術情報の統括を担う。 
半世紀にわたり同社が蓄積してきたハードエンボス加工の現場知見とフィルム加工分野の技術動向をもとに、実際の製造現場に基づく信頼性の高い技術情報の整理・監修を行っている。  

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