お問い合わせ
部材同士の接触を防ぐスペーサーフィルム|空間保持・傷防止への活用

公開日:2026/2/25

最終更新日:2026/8/6

部材同士の接触を防ぐスペーサーフィルム|空間保持・傷防止への活用

部材間にスペーサーフィルムを挟み、凹凸形状で空間を保持するイメージ

製造工程や保管、輸送の際に、部材同士が接触して傷や圧痕が発生することはありませんか。

製品や部品を重ねる工程では、次のような問題が起こることがあります。

・部材同士が擦れて表面に傷が付く
・積載時の荷重によって圧痕が残る
・フィルムやシートが密着して剥がしにくい
・部材同士が貼り付き、取り出しにくくなる
・接触部分に荷重が集中し、変形や外観不良が発生する
・緩衝材を厚くすると、製品全体の厚みや使用材料が増える

このような課題に対して、部材同士の間にスペーサーフィルムを挟み、一定の空間を設ける方法があります。

スペーサーフィルムの表面に立体的な凹凸を設けることで、部材同士の直接接触を減らし、擦れ傷や圧痕、密着を抑制できます。

本記事では、スペーサーフィルムによって部材間の空間を保持する仕組み、期待できる効果、用途例、素材や形状を選ぶ際のポイントについて解説します。

部材同士の接触によって起こる問題

製品や部材を重ねると、接触面には自重や積載荷重が加わります。

特に、表面が平滑な部材同士を重ねた場合、広い面積で密着しやすく、擦れ傷、貼り付き、圧痕などが発生することがあります。

擦れ傷・外観不良

輸送時の振動や工程内での移動によって部材同士が擦れると、表面に細かな傷が発生することがあります。

透明部材、加飾面、塗装面、光学部材など、外観品質が重視される製品では、わずかな傷でも不良につながる可能性があります。

圧痕・変形

製品を積み重ねると、接触部分に荷重が集中します。

突起や段差がある部材では、接触部分だけに大きな力が加わり、圧痕や変形が発生することがあります。

密着・貼り付き

平滑なフィルムやシート同士は、広い面積で接触すると密着しやすくなります。

その結果、部材を一枚ずつ取り出しにくくなったり、剥がす際に大きな力が必要になったりする場合があります。

ハンドリング性の低下

部材同士が密着すると、自動搬送機や吸着装置で一枚ずつ取り出せないことがあります。

作業者による取り出しにも時間がかかるため、作業性や生産性の低下につながります。

部材同士の接触を防ぐ主な方法

部材間の接触を防ぐ方法として、紙、不織布、発泡体、樹脂製スペーサー、保護フィルムなどが使用されています。

それぞれに特徴があるため、用途や必要な性能に応じて選定する必要があります。

対策方法
主な特徴
注意点
紙・合紙
入手しやすく、部材間へ挟みやすい
紙粉、吸湿、破れが問題になる場合がある
不織布
柔らかく、表面を保護しやすい
繊維の付着や厚みのばらつきに注意が必要
発泡シート
クッション性が高い
厚みが増えやすく、保管スペースを必要とする
樹脂製スペーサー
大きな間隔を保持しやすい
部品点数や取り付け工程が増える
フラットフィルム
薄く、異物や水分を遮断しやすい
面接触になりやすく、空間を保持しにくい
凹凸のあるスペーサーフィルム
薄い構成で接触面積を減らし、空間を形成できる
柄、基材、荷重条件に応じた評価が必要

スペーサーフィルムとは

本記事でいうスペーサーフィルムとは、製品や部材の間に挟み、直接接触を減らしながら一定のすき間を設けるためのフィルムです。

表面に立体的な凹凸を付与すると、凸部が部材を支える接点になります。

一方、凹部や谷部にはすき間が残るため、部材同士が全面で接触することを防ぎやすくなります。

平らなフィルムの場合

・部材とフィルムが面で接触する
・接触面積が大きくなる
・部材同士の間に空間が残りにくい

凹凸のあるスペーサーフィルムの場合

・凸部を支点として部材を支える
・接触が点または線に近い状態になる
・凹部に空間が残る
・部材同士の直接接触を減らせる

このように、スペーサーフィルムは厚みだけで間隔を確保するのではなく、表面の立体形状によって空間を形成します。

スペーサーフィルムで期待できる効果

部材同士の接触防止

凹凸の凸部が支点となることで、部材同士が直接触れる面積を減らせます。

部材の表面全体が接触する状態を避け、部分的な接触に変えることで、接触による不具合を抑制します。

部材間へスペーサーフィルムを挟んだ積載イメージ

擦れ傷の抑制

部材同士の直接接触が減ると、輸送時の振動や工程内での移動による擦れを抑えやすくなります。

ただし、スペーサーフィルムの凸部も部材と接触するため、凸部の形状や硬さによっては接触跡が残る可能性があります。

傷防止を目的とする場合は、実際の部材を使用し、荷重や振動を加えた状態で評価することが重要です。

部材間の空間保持

凹凸の高さを利用して、部材同士の間に一定のすき間を設けられます。

別部品のスペーサーを設置することが難しい場合や、製品全体を厚くしたくない場合にも検討できます。

金属板の間にスペーサーフィルムを挟み、部材同士の直接接触を防いでいる状態

圧力の分散

適切なピッチで凸部を配置すると、積載時の荷重を複数の支点へ分散できます。 
一点に荷重が集中する状態を避けることで、部材の圧痕や変形を抑制できる場合があります。 
ただし、荷重が大きすぎる場合は、凸部が潰れて空間を維持できなくなるため、耐荷重の確認が必要です。 

エンボススペーサーフィルムの複数の凸部で積載荷重を分散する模式図

クッション性・緩衝性の付与

立体的な凹凸には、押された際に変形する余地があります。
この変形によって衝撃や圧力を緩和し、薄いフィルムに一定のクッション性を持たせられる場合があります。
発泡体のような大きな緩衝性ではなく、薄い構成の中で接触を和らげたい用途に適しています。

エンボスフィルムの凸部が変形し、衝撃や圧力を緩和する模式図

密着防止・取り出し性の改善

接触面積が小さくなることで、フィルムや部材同士の過度な密着を抑えられる場合があります。
積み重ねた部材を一枚ずつ取り出しやすくし、手作業や自動搬送時のハンドリング性改善につながります。

スペーサーフィルムで積層部材の密着を抑え、一枚ずつ取り出しやすくする模式図

空気や液体の通り道の形成

凹凸の谷部が連続している形状では、部材間に空気や液体が移動するための経路を形成できる場合があります。

貼り合わせ時の空気抜け、通気、排液などを目的とする場合は、溝の方向、幅、高さ、連続性を考慮した形状設計が必要です。

連続したエンボスの谷部に空気や液体の移動経路を形成する模式図

スペーサーフィルムの凹凸を形成する方法

ロール・ツー・ロール方式でフィルムに凹凸形状を転写するエンボス加工の模式図

スペーサーフィルムの表面に立体形状を付与する方法の一つが、エンボス加工です。 
エンボス加工では、凹凸形状を持つロールをフィルムへ押し当て、主に熱と圧力によって表面へ形状を転写します。 
インクや発泡材を追加するのではなく、フィルム自体の表面形状を変えることで、接触状態や空間の作り方を調整できる点が特徴です。 
形状の高さ、ピッチ、凸部の大きさ、配列などを変えることで、次のような機能を調整できます。 

・部材との接触面積 
・形成される空間の大きさ 
・荷重を支える支点の数 
・荷重の分散状態 
・クッション性 
・空気や液体の流れる方向 
・密着防止や滑り性 

エンボス加工はスペーサーフィルムを作るための手段であり、重要なのは加工そのものではなく、使用目的に適した表面形状を設計することです。 

スペーサーフィルムの主な用途

工程用合紙・間紙

製造工程で部材同士の間に挟み、擦れ傷、密着、圧痕を抑える用途です。 
紙粉や吸湿を避けたい工程では、紙製の合紙から樹脂フィルムへの置き換えが検討されることがあります。 

工程用の合紙や間紙用途

成形品・部品の積載

樹脂成形品、金属部品、塗装部品などを積み重ねる際に、製品同士の直接接触を防ぐ目的で使用できます。 
製品表面の形状に応じて、必要な凹凸の高さやピッチを検討します。 

表面保護材

透明部材、加飾面、塗装面、印刷面など、外観品質が重視される部材の保護材として検討できます。 
ただし、保護対象が柔らかい場合は、スペーサーフィルムの凸部が転写・圧痕として残らないか確認が必要です。 

輸送・保管時の緩衝材

輸送中の振動や保管時の積載による接触を抑える用途です。
薄いフィルムで構成できるため、厚い発泡シートでは梱包サイズが大きくなる場合にも検討できます。

輸送保管時の緩衝材スペーサー用途

通気・空気抜け用途

連続した溝形状を利用し、貼り合わせ時の空気を逃がす用途や、部材間に通気経路を設ける用途にも応用できます。

スペーサーフィルムを選ぶ際のポイント

1.何の接触を防ぎたいか

最初に、対象となる部材と発生している問題を明確にします。 
・どの部材同士が接触しているか 
・どの工程で問題が発生するか 
・擦れ傷、圧痕、密着のどれを防ぎたいか 
・対象面にどの程度の外観品質が求められるか 
課題によって適した基材や凹凸形状が異なります。 

2.必要な空間の大きさ

どの程度のすき間が必要かによって、凹凸の高さを検討します。 
ただし、加工直後の凹凸高さが、そのまま使用時の空間になるとは限りません。 
部材の重量や圧着力によって凸部が変形するため、荷重を加えた状態で実際に残る空間を確認します。 

3.使用時に加わる荷重

部材の重量、積載段数、巻き締まり、圧着条件などを確認します。 
短時間では問題がなくても、長期間荷重が加わることで凹凸が徐々に変形する場合があります。 
初期状態だけでなく、一定時間荷重を加えた後の形状保持性も評価します。 

4.基材の硬さ・厚み

硬く剛性のある基材は、凹凸形状を支えやすく、空間を維持しやすい傾向があります。 
一方、柔らかい基材は対象物へ追従しやすいものの、荷重によって凹凸が潰れやすい場合があります。 
必要な空間、柔軟性、耐熱性、耐薬品性などを踏まえて基材を選定します。 

5.凸部の形状

凸部が細い、鋭い、硬い場合は、接触部分に荷重が集中しやすくなります。
柔らかい部材や外観面に使用する場合は、凸部による傷、圧痕、形状転写が発生しないか確認が必要です。
傷防止を目的とする場合でも、凹凸を大きくすればよいとは限りません。

スペーサーフィルムに使用できるダイヤ柄と格子柄のエンボスパターン例

6.凹凸のピッチ

ピッチが細かい形状は支点の数が多く、荷重を分散しやすい場合があります。
ピッチが粗い形状は大きな空間を作りやすい一方で、一つの凸部に荷重が集中する可能性があります。
対象物の硬さや荷重に合わせて、適切なピッチを選定します。

有効なエンボスフィルムの凹凸ピッチの模式図

7.使用環境

温度、湿度、薬品、屋外使用、使用期間なども確認します。 
高温環境ではフィルムや凹凸が軟化し、空間を維持できなくなる場合があります。 
繰り返し使用する場合は、洗浄方法、汚れ、摩耗、凹凸の復元性なども評価対象になります。 

スペーサーフィルムを使用する際の注意点

スペーサーフィルムを挟めば、すべての傷や接触を完全に防げるわけではありません。 
特に、次のような条件では事前評価が重要です。 


・対象物の表面が柔らかい 
・外観面にわずかな圧痕も許容されない 
・大きな荷重が長時間加わる 
・輸送中に強い振動が加わる 
・高温環境で使用する 
・凹凸形状が対象物へ転写する可能性がある 
・異物がフィルムと対象物の間に入り込む 
・繰り返し使用する 

スペーサーフィルムの評価では、「凹凸が付いているか」だけでなく、実際の使用条件で目的の空間が残るか、接触跡が付かないかを確認することが重要です。  

合同樹脂工業のスペーサーフィルム

エンボスフィルムによる空間付与(スペーサー)

合同樹脂工業では、PETフィルムを中心とした各種プラスチックフィルムへ凹凸形状を付与し、スペーサー、工程用合紙、緩衝材などの用途をご提案しています。 

PETフィルムでは12~250μm、その他素材では最大4mmまでの加工実績があります。 
また、マット、格子、ダイヤ、ストライプなど、100種類以上の既存エンボス柄を保有しています。 

既存柄に適した形状がない場合は、使用目的や必要な形状に合わせて、新しいエンボスロールの設計についてもご相談いただけます。 

対応可否や得られる形状は、次の条件によって異なります。 
・基材の種類 
・基材の厚み 
・単層または複層の構成 
・表面処理やコーティングの有無 
・必要な凹凸の高さ 
・フィルム幅 
・使用時の荷重 
・求める空間保持性 

空間保持用途では、凹凸の高さ、ピッチ、凸部形状、基材の剛性、使用時の荷重によって効果が変わります。接触防止、擦れ傷の抑制、密着防止、取り出し性の改善など、目的に合わせた表面構造をご相談いただけます。

試作・評価時に確認したい項目

エンボス加工の対応力について

スペーサーフィルムは、実際の部材と使用条件を組み合わせて評価することが重要です。 
試作時には、次の項目を確認します。 


・部材同士の直接接触を防げているか 
・必要な空間が形成されているか 
・荷重を加えた後も空間が残っているか 
・擦れ傷や圧痕が発生していないか 
・凸部の形状が対象物へ転写していないか 
・部材を取り出しやすくなったか 
・自動搬送や後工程に問題がないか 
・温度や湿度によって形状が変化しないか 
・繰り返し使用できるか 
・巻き取りや保管に問題がないか 

合同樹脂工業では、既存柄のカットサンプル、サンプル帳、枚葉試作、少量ロール試作、支給基材を使用した試作に対応しています。 

まずは既存柄で接触状態や空間保持性を確認し、必要に応じて基材、厚み、柄、高さ、ピッチなどを調整します。 

よくあるご質問(FAQ)

Q1.どの程度の空間を形成できますか?

形成できる空間は、凹凸の高さ、ピッチ、基材の厚み・剛性、使用時の荷重によって異なります。また、加工直後の凹凸高さが、そのまま実使用時の空間になるとは限りません。実際の部材と荷重条件を用いて、使用時に残る空間を確認します。

Q2.薄いPETでも空間付与は可能ですか?

PETフィルムでは、厚み12~250μmの加工実績があります。ただし、付与できる凹凸の高さや形状保持性は、基材厚み、フィルムの熱特性、柄、幅、加工条件によって異なります。

Q3.荷重を掛けても空間を維持できますか?

維持できる空間は、凹凸の高さ、ピッチ、基材の硬さ、積載荷重、使用時間によって異なります。加工直後の凹凸高さだけでなく、実際の荷重を掛けた状態で残る空間を確認することが重要です。

Q4.柄は選べますか?既存柄で試せますか?

100種類以上の柄から用途に合わせて選定できます。まずは既存柄でサンプル評価を行い、必要に応じて調整や専用設計を検討します。

Q5.コーティングや印刷も組み合わせできますか?

コーティング済み・印刷済みフィルムへのエンボス加工実績があります。ただし、表面処理の種類、耐熱性、層間密着性、印刷面の位置などによって対応可否が異なるため、基材構成や加工面をご共有ください。

Q6.PET以外のフィルムにも対応できますか?

PETのほか、PI、PC、PEN、PEEK、OPP、CPP、フッ素系フィルム、アクリル系フィルム、複層フィルム、印刷・蒸着・コーティングフィルムなどへの加工実績があります。 
基材構成や熱特性によって対応可否が異なるため、基材情報をご共有ください。 

まとめ

製造工程や保管・輸送時に部材同士が接触すると、擦れ傷、圧痕、密着、変形、取り出しにくさなどの問題が発生することがあります。 
表面に凹凸を持つスペーサーフィルムを部材間に挟むことで、凸部が支点となり、部材同士の直接接触を減らしながら一定の空間を形成できます。 


スペーサーフィルムでは、次のような効果を検討できます。 
・部材同士の接触防止 
・擦れ傷や圧痕の抑制 
・部材間の空間保持 
・荷重の分散 
・クッション性、緩衝性の付与 
・密着防止、取り出し性の改善 
・空気や液体の経路形成 

ただし、必要な性能は、対象物、荷重、基材、凹凸の高さ、ピッチ、使用環境によって異なります。 
部材同士の接触や擦れ傷、空間保持でお困りの場合は、使用している部材、発生している課題、必要なサイズ、荷重条件などをお知らせください。 

既存柄のサンプルや少量試作を通じて、用途に適したスペーサーフィルムをご提案します。

部材同士の接触、擦れ傷、圧痕、密着、取り出しにくさでお困りの場合は、対象部材、使用環境、積載荷重、必要なサイズなどをお知らせください。
既存柄のカットサンプルやA4サンプル、少量試作を通じて、用途に適した基材と凹凸形状をご提案します。  

執筆者

本記事は、半世紀以上にわたりエンボス加工専業で取り組んできた合同樹脂工業の技術知見をもとに解説しています。 
 
半世紀以上の経験から、ご要望に応じた素材や柄、使用方法をご提案いたします。

サンプルのご依頼も可能ですので、是非お気軽にご相談ください。

監修者:合同樹脂工業株式会社 代表取締役 長木 翔吾 

合同樹脂工業株式会社 代表取締役 長木翔吾

一橋大学商学部卒。経営コンサルティング会社にて製造業を中心とした経営支援業務に従事した後、合同樹脂工業株式会社に入社。 
プラスチックフィルムへのエンボス加工を主力とする同社にて、製造現場・品質管理・技術情報の統括を担う。 
半世紀にわたり同社が蓄積してきたハードエンボス加工の現場知見とフィルム加工分野の技術動向をもとに、実際の製造現場に基づく信頼性の高い技術情報の整理・監修を行っている。  

お問い合わせ