公開日:2025/4/3
最終更新日:2025/10/30
転写フィルムとは?—エンボス形状で樹脂に“機能+意匠”を与える

先日のブログ「光拡散フィルムとは?効果や用途をまるっとご紹介!」では光拡散フィルムの用途や作成方法などについてご紹介いたしました。
※まだご覧になられていない方はぜひ上記リンクからご確認ください。
本日のテーマは弊社エンボスフィルムも多く採用されている「転写フィルム」についてです。
昨今では樹脂部材の高付加価値化が求められるなか、「転写フィルム」を用いた加飾・機能付与技術が注目されています。
特に、フィルム表面に凹凸(エンボス形状)を形成し、それを樹脂へ転写することで、意匠性と機能性を同時に実現できる「樹脂転写フィルム」は、幅広い分野で導入が進んでいます。
本記事では、合同樹脂工業のハードエンボス技術をベースに、樹脂転写フィルムの仕組み・用途・採用メリットをわかりやすくご紹介します。
フィルムを使用し樹脂の機能性や意匠性を高める方法について様々な事例を交えながらご紹介いたしますので、最後までご覧いただけますと大変幸いでございます。
【会社紹介】
ハードエンボス加工の合同樹脂工業!
合同樹脂工業は、プラスチックフィルムへのアフターエンボス加工を手掛けている会社です。中でも二軸延伸ポリエステルフィルムやポリイミドフィルムなど高剛性のフィルムへも大きな凹凸を付与できる「ハードエンボス工法」が強みです。
100種類以上の豊富な柄ラインナップと半世紀にわたり培った加工技術を多種多様な素材と組み合わせ、お客様の抱える様々な課題解決にお力添えさせていただいております。

転写フィルムとは、模様や機能層を他の素材へ転写するために使われるフィルムです。
印刷インキや接着層などを積層した構造を持ち、熱・圧力・UV硬化といったエネルギーを与えることで、フィルムの表面層を樹脂や金属などの基材に移します。この転写フィルムには様々なものがあります。
一般的には、化粧板・プラスチックパネル・電子部品などの加飾や保護用途に用いられます。
中でも「樹脂転写フィルム」は、樹脂成型時にフィルム表面の意匠やエンボス形状を転写し、デザインだけでなく、表面機能(防汚性・マット感・滑り性など)を付与できる点が特長です。
転写フィルムの中でも、樹脂素材に柄パターンやデザインを転写する用途で使用されるフィルムを樹脂転写フィルムと呼びます。
主に熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂の成型時に使用されます。転写フィルムを樹脂表面に貼り、加熱や加圧することで、転写フィルム側のデザインを樹脂表面に転写します。
これにより、樹脂表面に意匠性や機能性を付与することができます。
樹脂転写用エンボスフィルムとは、フィルム表面に微細な凹凸を形成し、その形状を樹脂表面に転写することで、立体感や機能を与えるためのフィルムです。
合同樹脂工業では、PETフィルムなどの高耐熱性フィルムを使用し、ハードエンボス加工により安定した凹凸を再現しています。
弊社のハードエンボスフィルムは、最大1,600mm幅までの広幅加工に対応し、100種類以上のパターンを保有しています。
石目調・梨地・皮目・ヘアライン・マット調など、意匠や触感に合わせた多彩な柄を用意しており、高剛性フィルムにも深いエンボスを安定して付与可能です。
これにより、単なる印刷では得られない「立体感」「高級感」「機能的表面構造」を実現できます。
エンボスフィルムを樹脂表面に貼り合わせ、加熱・加圧やUV照射により樹脂を硬化させることで、樹脂の表面にエンボスフィルムに施された柄を転写することができます。
これにより、樹脂に様々な意匠性や機能性を付与できます。
樹脂とエンボスフィルムパターン(柄、各種処理、フィルム素材など)の多種多様な組み合わせにより、樹脂製品の付加価値向上を実現します。

エンボスフィルムを樹脂に転写する際、ハンドリング性の観点から、フィルムに耐熱性とコシ感が必要とされます。
弊社はハードエンボス工法により二軸延伸PETフィルムに大きな凹凸を付与できるため、ポリプロピレンやポリエチレン基材では実現が難しい、耐熱性と強靭な強度・剛性のある樹脂転写用エンボスフィルムを作成できます。
その特徴を活かし、ポリエステル樹脂やFRP樹脂などの【硬い樹脂】と【剛性のあるエンボスフィルム】を組み合わせることでダイナミックなエンボス柄の転写が可能となります。
エンボスフィルムを用いた樹脂転写については以下の動画で紹介しています。よろしければご覧ください。
・最大1,600mm幅までの広幅加工に対応(量産ライン対応可能)
・約100種類以上の標準パターンを保有(石目、皮目、ヘアライン、マットなど)
・高剛性フィルムへの深堀り加工が可能
・フィルム厚み・凹凸深さのカスタム設計対応
・エンボス転写後のフィルム剥離性の調整が可能であり転写品質が安定
これにより、単なる印刷による「平面的な装飾」ではなく、立体的で高級感のある意匠表現が可能になります。
また、凹凸構造そのものが防汚や耐傷などの機能性を発揮するため、意匠+機能の両立が図れます。
弊社エンボスフィルムは紫外線硬化樹脂・熱硬化性樹脂の硬化時に合わせることで、樹脂転写用フィルムとして使用されています。
ここでは、樹脂の種類別に使用事例をご紹介いたします。

↑石目柄のエンボスフィルムを樹脂に重ね合わせ、UV照射によって硬化させ、樹脂に転写したサンプルになります。
見た目だけでなく、本物の石のようなザラザラとした触り心地もエンボスフィルムによって付与しています。
硬化前の樹脂にエンボスフィルムを貼り合わせ、UV照射で硬化させることで、石目柄やヘアライン調の質感を精密に転写できます。
金属調・ガラス調・すりガラス調など、幅広い表面意匠を軽量な樹脂素材で再現することが可能です。
また、凹凸のある表面はキズや汚れが目立ちにくく、意匠と機能を兼ね備えた仕上がりとなります。さらに、UV照射で硬化させることで、表面がトップコートされたような形になり、傷がつきにくくなっています。
弊社では、エンボス柄入りの深さや表面粗さの微調整も可能です。そのため、柄入りの大小によってマット感を微調整することもできます。マットコートされたフィルムや練り込みマット基材など、素材自体を変更することでもマット感や光沢を微調整できます。
(上記画像は練り込みマット基材に石目エンボス加工したフィルムを用いてUV転写したものになります)

↑アクリル系の樹脂に、弊社ヘアラインフィルムを紫外線照射にて転写したサンプルとなります。
UV硬化のため、鉄にスクラッチをつけたものと比較して傷がつきにくくなっています。
マットコートフィルムにエンボス加工することで、プラスチックフィルムの透明感を抑えています。
樹脂転写用エンボスフィルムはポリエステル化粧合板用の意匠転写フィルムとしても使用されています。
木目や皮目、梨地・マット柄、ヘアライン調など、様々な意匠性を付与でき、建材用途などにて使用されています。
家具や壁材など鏡面のままだとキズや異物が付着した際に目立ちやすい箇所では、エンボス柄の目視効果だけでなく、エンボス加工による凹凸が防汚・耐擦傷・耐指紋といった性能も担います。

建材用として住宅用カーポートの表面にエンボス形状を転写することで、樹脂をすりガラス調にすることが可能です。
その効果により表面に遮光性やデザイン性を付与します。
その他にも、お風呂床のデザインを賦形する転写用工程紙フィルムとしてエンボスフィルムが使用された実績があります。

右の写真はOPPに皮目形状を賦形したエンボスフィルムで、TPU(熱可塑性ポリウレタン樹脂)へ形状転写を行ったものとなります。合成皮革の風合いを出しています。
マットコートフィルムや練り込みマットフィルムにエンボス加工を施すことで、プラスチック光沢感を消し、マットな高級感を出すことも可能です。

エンボスフィルムの凹凸形状をシリコンゲルやウレタンゲルといったゲルに転写することで、吸音材などの工程で使用される部材同士の密着防止用途や滑り性付与用途、工程材料のピックアップ補助用途として使用されています。
このように、転写技術は装飾用途にとどまらず、機能性フィルムとしても応用範囲が拡大しています。

エンボス加工による凹凸は、見た目のデザインだけでなく、表面特性にも大きな効果をもたらします。
凹凸によって光の反射をコントロールし、マット調・半光沢・金属調など、多様な質感表現を実現。
製品の高級感やブランドイメージの向上に直結します。
凹凸により表面の微細傷が目立ちにくく、汚れや指紋の付着も軽減。
家電や内装部品など、長期にわたる外観保持が求められる製品に最適です。
表面の立体構造が微細な空気層を形成し、摩擦を抑える効果があります。
ゲル材・シート材などの粘着防止にも活用できます。
微細エンボスにより、光の乱反射や拡散性を調整可能。
ディスプレイや照明用カバー、光学フィルムにも応用されています。
樹脂転写の性能は、使用するフィルムと柄設計に大きく左右されます。
まず重要なのは、転写対象の樹脂特性に適したフィルム選びです。
合同樹脂工業のハードエンボス工法では、PET、ポリイミド、PP、PEなど、さまざまな素材に対応し、耐熱性・剛性・リリース性を考慮した設計を行っています。
また、凹凸の深さ・ピッチ・粗さを最適化することで、
・光沢の調整(マット〜砂目)
・触感のコントロール(サラサラ・しっとり・ザラザラ)
・機能性(滑り・拡散・防汚)
などを自在に設計することが可能です。
用途やデザインテーマに合わせて、サンプル試作から量産まで一貫対応いたします。
樹脂転写フィルムは、様々な樹脂に機能性とデザイン性を同時に実現できる表面加工技術です。
中でも樹脂転写用エンボスフィルムを使用することで、樹脂とエンボスフィルムパターン(柄、各種処理、フィルム素材など)の多種多様な組み合わせにより、様々な樹脂課題の解決・付加価値の向上を実現できます。特に、エンボス形状を活用したフィルムは、見た目の高級感だけでなく、耐久性・防汚性・滑り性といった機能面でも優れた性能を発揮します。
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。
今回のブログ内容はいかがでしたでしょうか。
合同樹脂工業では、長年にわたり培ってきたエンボス加工技術をもとに、お客様の課題に合わせたフィルム設計を提案しています。
デザイン開発段階での共同検討や、小ロット試作にも柔軟に対応しております。
「素材の価値を高める表面づくり」をテーマに、今後も新しい意匠展開にも挑戦を続けてまいります。
製品開発・評価・試作のご相談など、お気軽にお問い合わせください。
お客様のアイデアを、エンボスフィルムの力でカタチにいたします。
少しでもご参考になれば幸いでございます。
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