公開日:2024/11/25

最終更新日:2025/10/20

エンボス加工とは?素材と凹凸で機能性付与“エンボス加工”の基礎をご紹介!

エンボス加工とは?ブログタイトル画像

はじめに

先日のブログ「エンボスとは?機能性付与や意匠性向上に役立つ“エンボス加工”の基礎知識をまとめました!」でエンボスとは?についてご紹介いたしました。 
※まだご覧になられていない方はぜひ上記リンクからご確認ください。 
 

今回はさらに一歩進んで、「どのような素材にエンボス加工が施されるのか」「エンボス加工が持つ具体的な機能とは?」について詳しくご紹介します。

エンボス加工とは、フィルムやシートの表面に凹凸模様を施すことで、視覚的な装飾性と実用的な機能性を付加する加工技術です。本記事では、エンボス加工の原理や仕組み、対応可能な素材、機能面での効果、具体的な活用事例まで、幅広く詳しく解説いたします。

 【自己紹介】 
当社・合同樹脂工業は、ポリエステルやポリイミドなどの高剛性フィルムを中心に、エンボス加工を行っております。精密な凹凸形成技術と100種類以上のエンボスパターンを活かし、機能性と意匠性を両立した製品を多業界にご提供しています。

エンボス加工の用途一覧①
エンボス加工の用途一覧②

エンボス加工とは?

エンボス加工とは、フィルムやシート表面に加熱・加圧をかけて凹凸パターンを転写する加工です。この加工により、装飾性だけでなく、滑り止め性、剥離性、光拡散性など、多様な機能性が加わります。

加工後のフィルムは「エンボスフィルム」と呼ばれ、包装材、工業材料、電子部材など多くの用途で使用されています。

PETフィルムへ施された皮目調エンボス加工例

エンボスフィルムの作り方(エンボスロールとは)

エンボス加工は、特殊なパターンを施した金属製のエンボスロールを使用して行います。素材を加熱しながらエンボスロールで加圧することで、表面に凹凸模様を転写します。

エンボスロールにはクロムメッキなどの耐摩耗性処理が施され、長期間安定した加工が可能です。当社では、皮目・格子・水玉・マット調・鶴柄など100種類以上の柄に対応可能で、深さの調整もミクロン単位で行えます。柄深さも用途に応じて調整でき、素材ごとに考慮した加工設計を行っています。

エンボス加工で可能な柄
エンボス加工で可能な柄

エンボス加工に対応する素材

PE(ポリエチレン)

実は日常生活で一番エンボスされた目にすることが多い素材かもしれません。身近なところではスーパーのレジ袋に施されており、開封補助効果や湿布のセパレーターの剥離力向上目的などにエンボス加工が使用されています。 

ポリエチレン素材のイメージ写真

PP(ポリプロピレン:OPP、CPP)

PP(ポリプロピレン)フィルムは軽量で耐薬品性に優れ、コストパフォーマンスが高い素材です。エンボスを施すことでラベルや包装工程で使用されております。
また、艶消し・マット調など意匠性と機能性を両立できる点が魅力です。

PETフィルムへ施された皮目調エンボス加工例

PET(ポリエチレンテレフタレート)

強靭な剛性やガスバリア性といった優れた特徴を持つポリエステル。透明性と強度のバランスが良く、当社でも最も加工実績の多い素材です。
工程紙・離型フィルム・装飾転写フィルムなど、多様な産業分野で利用されています。
また、表面の凹凸パターンを利用して光拡散性や滑り性をコントロールする用途が増えています。
耐熱性にも優れているため、加熱工程を伴う製造プロセスにも対応可能です。

PETフィルムへ施された鶴柄のエンボス加工例

ポリイミド(PI) 

ポリイミドフィルムは耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、機械的強度に優れており、通常300°C以上の温度に耐えることができます。当社はポリイミドフィルムにエンボスが可能です。

右の画像はPIフィルムへエンボス加工を施したフィルムとなります。 

ポリイミドフィルムへエンボス加工を施した参考写真

素材別の適性と加工実績

エンボス加工の素材対応表

エンボス加工の効果・メリット

エンボス形状はフィルムに多様な効果をもたらします。凹凸パターンにより装飾性が向上し、質感や高級感を演出可能です。また、光を乱反射させることでグレアを抑え、視認性を向上させます。さらに、滑り止め効果を持たせることで安全性を高め、傷や指紋、汚れが目立ちにくくなる実用性もあります。凹凸が摩耗を分散させるため耐久性が向上し、製品の保護性能もアップします。こうした効果により、エンボス加工されたフィルムは、デザイン性と機能性を兼ね備えた素材として広く利用されています。

表面積の増加

エンボス加工を施すことによりフィルム表面の凹凸による表面積の向上が可能となります。深度が大きい柄ほど表面積は向上します。

接触面積が増え、接着性や吸収性向上に寄与することもあります。

エンボス加工による効果(表面積の増加)

剥離性の向上

エンボス加工を施すことで表面の凹凸による対象物との接地面積を低減することが可能となります。その効果で対象物との剥離性能を向上させることができ、セパレーター用途などに最適です。

エンボス加工による効果(接触面積の低下)

クッション性(空間・空気層)の付与

凹凸内部に空気層を形成し、緩衝材・スペーサーとしての機能を持たせられます。クッション性を与えることが可能となり、緩衝材などに活用することが可能です。

※当社では12μフィルムへ300μ以上の深さを付与可能

エンボス加工による効果(クッション性の増加・スペーサー効果)

光拡散効果

エンボス加工はその凹凸により【光を拡散・乱反射】させる効果を付与することが可能です。 表面のエンボス形状により、視覚的にモノを隠蔽・遮断する効果や、蛍光灯など光源の映り込みを防止することが可能になります。

エンボス加工による効果(光拡散)

艶消し効果(マット加工)

エンボス加工による凹凸は光の乱反射を促すことが可能です。特に、深い柄は光を乱反射する能力が高く、マットや梨地などの柄は表面のフラット性をなくし、フィルムへ光の乱反射や屈折による艶消しの効果を付与することが可能です。 
 
・光の拡散 
光を乱反射させ、ギラつきを抑えたソフトな見た目を実現。 

・視認性の向上 
反射防止(アンチグレア)ディスプレイの保護フィルムなどで、視認性を向上。 


イルミネーションなどの祭典で光の装飾などに使用された実績もございます。※詳細は光拡散効果のページでご紹介しております。 

エンボス加工フィルムの参考用途(光拡散)
エンボス加工フィルムの使用例_厚いフィルム
エンボス加工フィルムの使用例_艶消し

視覚効果(装飾・デザイン性の付与)

エンボスフィルム柄_水玉の写真
ンボスフィルムを用いた樹脂転写の仕上がり例

表面のテクスチャによって、光の反射をコントロールし、マットな仕上がりや特定の装飾効果を作り出します。 また、凹凸パターンがあることで高級感や独特なテクスチャを演出できる。革調やマット仕上げ、すりガラス調など多様な表現が可能です。上記写真イメージの様にエンボスフィルムから樹脂に転写することも可能です。

エンボスフィルムの使用事例

エンボスフィルムは、プラスチックフィルムの表面に凹凸(パターン)を付与することで、機能性・意匠性の両立を図った高付加価値材料です。さまざまな業界で使用されています。

ウィンドウフィルム用途

エンボスフィルムはウィンドウフィルム用途でも使用されており、エンボスによる凹凸が自然光を柔らかく拡散させ、室内の眩しさを軽減。空間全体をやさしい印象にする効果やすりガラス調にすることで可視光の透過率をコントロールすることで、外からの視線を遮断しながら採光を確保することが可能です。

建材用樹脂(FRP)への転写用途

樹脂硬化時にエンボスフィルムを合わせることで、フィルムの形状を樹脂に転写することができます。 
 
住宅用カーポートの表面にエンボス形状を転写することで、樹脂をすりガラス調にすることが可能です。その効果により表面に遮光性やデザイン性を付与します。 
 
また、お風呂床のデザインを賦形する転写用工程紙フィルムとしてエンボスフィルムが使用された実績もあります。


エンボスフィルムを用いた樹脂転写については以下の動画で紹介しています。よろしければご覧ください。

FRP樹脂へのエンボス転写参考例

セパレーター用途

エンボス加工でフィルムの表面に凹凸形状をつけることで、フラットよりさらに離型性能を高めたセパレーターを作成できます。 
 
ゴムやゲルなどの過密着しやすい粘性製品への密着防止、剥離性の高い保護フィルムなどの用途でお客様の抱える離型課題の解決に貢献しています。  
 
エンボス加工はシリコンフリーかつ残渣やアウトブリードの発生しないセパレータとしてご使用いただけます。

セパレーターフィルムへのエンボス加工の参考例

よくあるご質問

薄膜(12µm)でもエンボス加工は可能ですか?

はい。加工条件を調整することで、12µm~250μ程度のフィルムでも均一な凹凸形成が可能です。用途に応じて最適な深さをご提案いたします。

金型の初期費用はどのくらいですか?

パターン形状やサイズによって異なります。弊社では初期評価に利用可能な100種の金型からご選択可能です。まずは既存柄で試作・評価を実施することも可能です。

小ロットでの試作にも対応していますか?

~100m/1巻の単位など小ロット対応も承っております。開発・評価段階での比較試験にもご活用ください。

エンボス加工のまとめ

エンボス加工は、プラスチックフィルム表面に凹凸加工を施す加工です。装飾性(デザイン)と機能性をフィルムへ付与することが可能であり、凹凸パターンにより、光の乱反射で視認性向上や艶消し効果を得られ、滑り止めや耐久性、剥離性の向上など多様な効果を発揮します。ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PET)、ポリイミド(PI)など多種素材に対応可能で、建材や各種工程紙などに広く活用されています。用途に応じたデザインや機能の選択が可能です。

エンボス加工のイメージ写真

エンボス加工フィルムの素材別の加工前後写真
蒸着フィルムへのエンボス加工品

最後に

今回の記事が、皆さまの製品開発や課題解決のヒントになれば幸いです。
「この素材にもエンボス加工できる?」「○○の機能性を高めたい」などのご相談もお気軽にお寄せください。

みなさまのご参考になれば幸いです。 

その他のブログについてもぜひご覧ください。→ブログ一覧

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