公開日:2025/4/18
最終更新日:2025/11/13
PETフィルムとは?— 特徴・用途・環境面の強みと、エンボス加工で広がる可能性

先日のブログ「樹脂転写フィルムとは?樹脂にエンボス形状を賦形し機能や意匠を付与!」では樹脂転写フィルムについて事例を交えながらご紹介いたしました。
※ご覧になられていない方はぜひ上記リンクからご確認ください。
本日のテーマは弊社が最もエンボス加工を得意とする「PETフィルム」についてです。PETフィルムの特徴や用途、メリット、エンボス加工事例、環境対応などをご紹介いたします。簡単ではございますが最後までご覧いただけますと大変幸いでございます。
【自己紹介】
ハードエンボス加工の合同樹脂工業!
合同樹脂工業は、プラスチックフィルムへのアフターエンボス加工を手掛けている会社です。中でも二軸延伸ポリエステルフィルムやポリイミドフィルムなど高剛性のフィルムへも大きな凹凸を付与できる「ハードエンボス工法」が強みです。100種類以上の豊富な柄ラインナップと半世紀にわたり培った加工技術を多種多様な素材と組み合わせ、お客様の抱える様々な課題解決にお力添えさせていただいております。


PET(ポリエチレンテレフタレート)は熱可塑性ポリマーで、シートを縦横二方向に延伸して作られる二軸延伸PETフィルム(BOPET)は、分子鎖の配向により高強度・高透明を両立させた工業用フィルムです。光沢と寸法安定性、耐薬品性などのバランスがよく、電気・電子、包装、加飾、転写、セパレーターなど多用途に展開されています。

1.押出:溶融したPETをダイから押し出して厚いシートに。
2.急冷:ロールで素早く冷却し、無定形に。
3.二軸延伸:縦・横の両方向に延伸して分子鎖を整列、強度・透明性が向上。
4.熱セット:高温で構造を固定し、寸法安定性を確保。
引張強度が高く、折り曲げ耐性や耐衝撃性、耐摩耗性に優れています。
吸水性が小さく、線膨張係数が小さいです。
油脂、希酸、希アルカリなど、多くの溶剤に対し耐性を有します。
汎用的なプラスチックフィルムの中では耐熱温度が高く、-70℃から150℃の範囲で使用可能で、機械的特性への影響が小さいです。
ガス、水蒸気、油、臭気に対する優れたバリア性を持つことから、包装用途などにも適しています。

高い透明性と光沢を有します。
優れた電気絶縁体であり、 誘電強度も高いです。そのため電子部品などでも使用されています。
優れた耐電圧性や耐熱性、強度、耐摩耗性があることから、モーター、ケーブル、柔軟なプリント基板の絶縁材として使用されています。
印刷性と耐久性の高さから、ラベルやテープなど印刷用基材として使用されています。

ガスや湿気に対する高いバリア性を活かして、食品、飲料、医薬品の包装などで使用されています。
高強度と軽量性、熱安定性があることから、コンデンサフィルムや保護層などにも使用されています。
弊社は二軸延伸PETフィルムを中心にエンボス加工を行っております。
PETの剛性・耐熱・透明というベース性能に、**表面形状(凹凸)を組み合わせることで、質感・機能の両面で新しい価値を生み出せます。
以下では、その事例についてご紹介いたします。
二軸延伸PETの高剛性・耐熱性に、エンボスでコシ感・表面強度を加えることで長期使用に適した材料設計が可能。結果として交換頻度の低減=廃棄の抑制につながります。
その結果、プラスチック廃棄量の削減につながり、環境への負荷を軽減することができます。
PE・PPでは柔らかさがネックになる工程でも、二軸延伸PETエンボスなら耐熱・剛性で形状保持が効きやすく、熱硬化樹脂への転写用離型フィルムや電子工程用セパレーターとしての可能性が広がります。
高剛性・高耐熱性である二軸延伸PETフィルムにエンボス加工を施すことで、熱硬化樹脂への転写用フィルムや電子工程でのセパレータフィルムなどとしてもご使用いただけます。

↑高剛性・高耐熱性によりガラスの飛散防止性や遮熱性を実現できるPETフィルムにエンボス加工することで、下記のようなメリットのあるウィンドウフィルムを作成できます。
①遮蔽性(視認防止性)やすりガラス調の意匠性
②エンボスの凹凸による光拡散に伴う蛍光灯の映り込み防止性
③エンボスの凹凸による防指紋性や防汚性
④エンボス凹凸の空間による断熱性・結露防止性・遮熱性の向上

剛性のあるPETフィルムにエンボス加工をすることで、ダイナミックで立体的な形状を作り出すことが可能です。エンボス形状高さは最大で~1.2mmまでの実績がございます。
大きな凹凸によりフィルムに触感を付与することもでき、そのフィルムを転写フィルムとして使用することで、樹脂などの転写物に触感を付与することもできます。
上の写真はエンボスフィルムでFRP樹脂表面へダイナミックな形状を転写したサンプルとなります。
剛性のあるPETフィルムを用いるからこそ、フィルムに大きな凹凸を付与でき、そのエンボスフィルムを転写用フィルムとして用いることで樹脂表面にも大きな形状を付与できます。

紙製の工程紙や離型紙を使用している工程では、紙粉が出ることによる製造ラインや製品の汚染が懸念されます。
また膜厚の均一性が悪いことも多く、精度が要求される電子部材の工程紙として使用する際には後工程で不具合が発生することがあります。
そのような課題を有しながらPPやPEでは耐熱性が足りない場合は、耐熱性の高いPETフィルムを用いることで解決できる場合があります。
PPやPEを使用している工程では、素材の添加剤が時間の経過によりフィルム表面に浮き出てくるブリードアウト現象が生じることがあります。
これにより、フィルム表面が白濁し、油分がフィルム表面に付着することで印刷適正の低下や粘着力の低下、製品への付着による不具合、添加剤の擦れにより製品にキズがついてしまうなど、様々な不具合に繋がる場合があります。
添加剤を含まないPETフィルムを用いることにより、ブリードアウト現象の発生を防ぐことができます。
・光拡散/映り込み抑制:微細ランダム、梨地、マット系
・離型/セパレーター:頂点面積・谷形状の最適化、接触圧に応じた実効接触面の調整
・触感/加飾:大振幅の周期パターン、自然物模様(例:石目/木目)
・防指紋/防汚:微細凹凸+表面エネルギー設計(必要に応じて上位工程での表面改質と併用)

PETフィルムはリサイクル可能なため、廃棄物を減らすことができます。
当社のエンボス加工は添加物などを一切使用しないケミカルフリーの工法のため、フィルム素材そのままでのリサイクルが可能です。

昨今、マテリアルリサイクル(廃棄物を新たな製品の原料として再利用する方法)が推進されていますが、その中にはリサイクルが困難なものや、分類・仕分けに時間がかかるものもあります。
例えば、塗工されたフィルムにはコーティングが付いているため、そのフィルムをマテリアルリサイクルするには、まずは回収されたフィルムを洗浄して異物を取り除くことが必要です。次いでそれを粉砕してフレーク状にし、再利用原料として新たな製品を製造します。
当社のエンボス加工は無添加かつ素材の能力を活かした加工となっており例えば剥離性の高いエンボス形状を賦形することで無添加なセパレーターを作ることも可能になります。エンボスフィルムは無添加製品であるため、ケミカルフリー工法が好まれる精密機器などの用途でご使用されています。
傷や化学物質にも強いため製品の寿命が長く、交換頻度が減ることで廃棄物を削減できます。
高強度なために軽量での設計が可能で、輸送時のエネルギー消費と炭素排出量を削減できます。
PETフィルムはプラスチックフィルムの中でも強度があるため、金属製品などの代替として使用することで軽量化を図ることができます。
エンボス加工を行うことでさらなる強靭化・コシ感の付与を実現することもできます。
地中に埋め立てられた場合でも地下水を汚染する心配がありません。

当社は独自のハードエンボス工法により、2軸延伸PETやポリイミドのような高剛性の素材をはじめ、PEEKフィルム、フッ素フィルム、ポリカフィルム、PENフィルム、PBTフィルム、OPP、CPP、アクリルフィルムなどにも豊富な加工実績がございます。フィルム素材とエンボス加工との組み合わせにより、フィルムの可能性を引き出しています。
A. 用途や基材に依存しますが、最大で~約1.2mmの形状高さ実績があります。大柄/触感設計もご相談ください。
A. BOPET/PIのほか、PEEK、フッ素、PC、PEN、PBT、OPP、CPP、アクリルなど豊富な加工実績があります。
A. 光拡散/視認制御/防汚、離型/セパレーター、加飾/触感転写など。PE/PPでは難しい環境で優位性が出やすいです。
A. 無添加の物理加工で、リサイクルへの障壁を増やしにくいのが特徴。長寿命・軽量もCO₂削減に寄与します。
PETフィルムは、強度・寸法安定・耐薬品・耐熱・バリア・光学・電気といった総合力に優れ、包装から電子・加飾・セパレーターまで幅広い領域で採用が進む基幹素材です。ここにハードエンボスを組み合わせることで、視認制御、光拡散、防汚/防指紋、離型、触感、断熱など多様な機能を塗工レスで付与でき、無添加=循環適合という環境価値も同時に実現します。
「紙粉やブリードの課題を解決したい」「映り込みや指紋を抑えたい」「触感・意匠を一発で表現したい」
——そんなテーマに対して、柄×基材×工程を最適化した最短ルートの試作→量産をご提案します。
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。
今回のブログ内容はいかがでしたでしょうか。
みなさまのご参考になれば幸いでございます。
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