公開日:2024/11/25
最終更新日:2025/12/18
エンボス加工とは?素材に凹凸を賦形し機能・意匠を付与する加工法・種類・効果・用途を徹底解説

エンボス加工とは、金属製のエンボスロール(金型)を用いて、フィルムやシート表面に凹凸模様を加熱・加圧で転写する加工技術です。
浮き出し加工とも呼ばれ、意匠性や摩擦制御、光拡散、剥離性などの機能を付与できます。

エンボス加工とは、フィルムやシートの表面に凹凸を形成することで、見た目の印象だけでなく、さまざまな機能性を付与できる加工技術です。
単なる装飾加工ではなく、「表面構造を設計する加工」として、工業用途を中心に幅広く活用されています。
具体的には、エンボス加工によって以下のような効果・機能を実現できます。
・凹凸による立体感や高級感の付与
・光を乱反射させることで、光拡散や映り込み防止を実現
・表面摩擦を調整し、滑り止め性やハンドリング性を向上
・接触面積を減らすことで、剥離性・離型性を向上
・凹凸内部に空気層を持たせることで、クッション性やスペーサー効果を発揮
このように、エンボス加工とは「意匠性」と「機能性」を同時にコントロールできる点が大きな特長です。
用途や目的に応じて凹凸の形状・深さ・パターンを設計することで、フィルムやシートの付加価値を大きく高めることができます。
エンボス加工は、紙やプラスチックフィルム、金属などの素材に施すことで、機能性・意匠性・触感の特徴的な効果を生み出します。
エンボス加工には裏面を押し上げて浮かす(裏面は凹む)方式や、表面に特殊なインクを付着することで凸部を形成する(裏面は凹まない)方式があります。
エンボス加工により凹凸を形成することで、フラットでは成し得なかった離型性やクッション性といった機能を持たせたり、手触りや意匠性を付与することが可能となります。


ロールtoロールエンボスは、柄のついたエンボスロールでフィルム等の素材をニップし、押し当てることで賦形する加工法です。
当社のエンボス加工はこの工法であり、連続的に加工して製品を作る連続成型が可能です。
このプロセスは、特に大量生産などの際に適しています。※右イメージ

平版印刷エンボスは、印刷技術の一種です。プレート型の金型によりエンボス加工を施すことで、凹凸のあるデザインや立体感を持たせた印刷物を作成することができます。この技術は、特にパッケージデザインや広告などでよく使われています。
表面に特殊インクを盛る方式で、裏面を変形させず印刷一体での成形が可能です。
エンボス加工による凹凸が光を反射させ、製品の見た目に高級感や立体感を与えます。マット調・艶消し・レザー調・石調など、用途に応じて質感を自在に設計できるため、ブランドイメージを大きく左右する要素になります。デザイン印刷だけでは出せない質感演出が可能です。
例えば、ロゴやデザインをエンボス加工で付与することで、ブランドの認知度を高めることができます。高級ブランドや特別な製品によく見られる技術です。

エンボス加工は大きな凹凸を形成することも可能なため、単なるデザインだけでなく、触感も付与できます。ザラザラとした触感やマット感のある触感など、「触れるデザイン」として人の感覚に訴えかける表現が可能です。
右の写真はエンボスフィルムで樹脂表面へ本物の石のような触り心地を転写したサンプルとなります。エンボス形状の転写により、フラットな素材では難しい触り心地を実現できます。

エンボス加工により特定の凹凸パターンを賦形することで、接触面積が低下し、剥離性を高めることができます。エンボス加工は熱と圧力のみで成形する加工法のため、添加剤等を使用しません。そのため、シリコンフリーの離型セパレータとして使用できます。
エンボス加工により凹凸を賦形することで、物体を滑りやすくしたり、物体同士の密着を防止することができます。
特定のパターンやテクスチャをエンボス加工することで、滑り止め効果を得ることもできます。
持ちやすさ(グリップ性)や安全性が向上します。
特定の素材では、エンボス加工が摩耗や傷から守る役割を果たすことがあります。表面に凹凸をつけることで、傷や汚れが付着しにくくなったり、目立ちにくくなります。
近年、エンボス加工が改めて注目を集めている理由のひとつが「環境対応」です。
エンボス加工は熱と圧力のみで成形する加工法のため、他の凹凸を賦形する工法とは異なり、シリコン等の添加剤や残渣、塗工剥がれ・滑落の懸念がありません。
また、再生材や使用済みフィルムの再利用が進むなかで、エンボス加工は「再利用時の機能再生手段」として活用されています。
たとえば、廃棄予定の工程紙やセパレーターを再エンボス(Reエンボス)することで、滑り性や離型性を復元し、再利用を可能にします。これにより、廃棄物の削減とコスト低減を同時に実現します。
高品質なエンボス加工を行うためには、特別な機械や金型が必要であり、そのためのイニシャルコストが大きくなります。また1つの凹凸パターンに対して1つの版を作成する必要があるため、コストが高くなることがあります。
→弊社では100種類の自社版を所有しておりますため、初期検討段階から様々な凹凸パターンにて少量ずつご検討いただけます。
非常に微細な凹凸パターンや大きすぎる柄パターンは、エンボスロールを作成する際に制約がある場合があります。
エンボス加工に適した素材には制約があります。例えば、柔らかすぎる素材や非常に硬い素材は、加工が難しい場合があります。
→当社は一般的に後加工が難しいとされる延伸PETやPEN、ポリカーボネート(PC)フィルムなどへも加工可能です。
高度なデザインや細かなディテールを含むエンボス加工は、技術的に難しく、熟練した職人の技術が必要です。
エンボス加工は、フィルムやシート表面に加熱・加圧し、凹凸パターンを転写する場合も用いられます。
形成された凹凸は装飾性だけでなく、滑り性や剥離性、光拡散性、クッション性など、多彩な機能性を付加します。
こうして加工されたフィルムは「エンボスフィルム」と呼ばれ、幅広い分野で活用されています。

エンボス加工は、柄パターンを施した金属製のエンボスロールを使用して行います。素材を加熱しながらエンボスロールで加圧することで、表面に凹凸模様を転写します。
エンボスロールにはクロムメッキなどの耐摩耗性処理が施され、長期間安定した加工が可能です。当社では、皮目・格子・水玉・マット調・鶴柄など100種類以上の柄に対応可能で、深さの調整もミクロン単位で行えます。用途や素材に応じた加工設計を行っています。

日常生活で最も目にすることが多い素材かもしれません。身近なところではスーパーのレジ袋にエンボスが施されており、開封補助効果や湿布セパレーターの剥離力向上目的でエンボス加工が活用されています。
ポリプロピレン(PP)フィルムは軽量で耐薬品性に優れ、コストパフォーマンスが高い素材です。エンボスを施すことでラベルや包装工程で使用されております。
また、艶消し・マット調など意匠性と機能性を両立できる点が魅力です。

強靭な剛性やガスバリア性といった優れた特徴を持つポリエステル。透明性と強度のバランスが良く、当社でも最も加工実績の多い素材です。
工程紙・離型フィルム・装飾転写フィルムなど、多様な産業分野で利用されています。
また、表面の凹凸パターンを利用して滑り性や光拡散性をコントロールする用途でも活躍しています。
耐熱性にも優れているため、加熱工程を伴う製造プロセスにも対応可能です。

ポリイミドフィルムは耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、機械的強度に優れており、通常300℃以上の温度に耐えることができます。当社はポリイミドフィルムにエンボスが可能です。
右の画像はPIフィルムへエンボス加工を施したフィルムとなります。

エンボス形状はフィルムに多様な効果をもたらします。凹凸パターンにより装飾性が向上し、質感や高級感を演出可能です。また、光を乱反射させることでグレアを抑え、視認性を向上させます。さらに、滑り止め効果を持たせることで安全性を高め、傷や指紋、汚れが目立ちにくくなる実用性もあります。凹凸が摩耗を分散させるため耐久性が向上し、製品の保護性能もアップします。こうした効果により、エンボス加工されたフィルムは、デザイン性と機能性を兼ね備えた素材として広く利用されています。
エンボス加工を施すことによりフィルム表面の凹凸による表面積の向上が可能となります。深度が大きい柄ほど表面積は向上します。
接触面積が増え、接着性や吸収性向上に寄与することもあります。
エンボス加工を施すことで表面の凹凸による対象物との接地面積を低減することが可能となります。その効果で対象物との剥離性能を向上させることができ、セパレーター用途などに最適です。
凹凸内部に空気層を形成し、緩衝材・スペーサーとしての機能を持たせられます。クッション性を与えることが可能となり、緩衝材などに活用することが可能です。
※当社では12μフィルムへ300μ以上の深さを付与可能
エンボス加工はその凹凸により【光を拡散・乱反射】させる効果を付与することが可能です。 表面のエンボス形状により、視覚的にモノを隠蔽・遮断する効果や、蛍光灯など光源の映り込みを防止することが可能になります。
エンボス加工による凹凸は光の乱反射を促すことが可能です。特に、深い柄は光を乱反射する能力が高く、マットや梨地などの柄は表面のフラット性をなくし、フィルムへ光の乱反射や屈折による艶消しの効果を付与することが可能です。
・光の拡散
光を乱反射させ、ギラつきを抑えたソフトな見た目を実現。
・視認性の向上
反射防止(アンチグレア)ディスプレイの保護フィルムなどで視認性を向上。
イルミネーションなどの祭典で光の装飾などに使用された実績もございます。
※詳細は光拡散効果のページでご紹介しております。


表面のテクスチャによって、光の反射をコントロールし、マットな仕上がりや特定の装飾効果を作り出します。 また、凹凸パターンがあることで高級感や独特なテクスチャを演出できる。革調やマット仕上げ、すりガラス調など多様な表現が可能です。上記写真イメージの様にエンボスフィルムから樹脂に転写することも可能です。
エンボスフィルムは、プラスチックフィルムの表面に凹凸(パターン)を付与することで、機能性・意匠性の両立を図った高付加価値材料です。さまざまな業界で使用されています。
エンボスフィルムはウィンドウフィルム用途でも使用されており、エンボスによる凹凸が自然光を柔らかく拡散させ、室内の眩しさを軽減。空間全体をやさしい印象にする効果やすりガラス調にすることで可視光の透過率をコントロールすることで、外からの視線を遮断しながら採光を確保することが可能です。

樹脂硬化時にエンボスフィルムを合わせることで、フィルムの形状を樹脂に転写することができます。
住宅用カーポートの表面にエンボス形状を転写することで、樹脂をすりガラス調にすることが可能です。その効果により表面に遮光性やデザイン性を付与します。
また、お風呂床のデザインを賦形する転写用工程紙フィルムとしてエンボスフィルムが使用された実績もあります。
エンボスフィルムを用いた樹脂転写については以下の動画で紹介しています。よろしければご覧ください。

エンボス加工でフィルムの表面に凹凸形状をつけることで、フラットよりさらに離型性能を高めたセパレーターを作成できます。
ゴムやゲルなどの過密着しやすい粘性製品への密着防止、剥離性の高い保護フィルムなどの用途でお客様の抱える離型課題の解決に貢献しています。
エンボス加工はシリコンフリーかつ残渣やアウトブリードの発生しないセパレータとしてご使用いただけます。

エンボス加工は素材表面を盛り上げるように凹凸を形成する加工で、デボス加工は逆に凹ませる加工を指します。用途やデザイン意図によって使い分けられます。
印刷はインクで模様を表現しますが、エンボス加工は物理的な凹凸を形成する点が大きな違いです。触感や機能性を付与できるのが特長です。
包装材、工程用フィルム、離型フィルム、建材、保護フィルムなど、意匠性と機能性が求められる幅広い分野で使用されています。
材料や厚みによりますが、12µm~300µm程度のフィルムでも均一な凹凸形成が可能です。用途に応じて最適な深さをご提案いたします。
パターン形状やサイズによって異なります。弊社では初期評価に利用可能な100種の金型からご選択可能です。まずは既存柄で試作・評価を実施することも可能です。
~100mの単位など小ロット対応も承っております。開発・評価段階での比較試験にもご活用ください。
本記事は、半世紀以上にわたりエンボス加工専業で取り組んできた合同樹脂工業の技術知見をもとに解説しています。
エンボス加工は、プラスチックフィルム表面に凹凸加工を施す加工です。装飾性(デザイン)と機能性をフィルムへ付与することが可能であり、凹凸パターンにより、光の乱反射で視認性向上や艶消し効果を得られ、滑り止めや耐久性、剥離性の向上など多様な効果を発揮します。ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PET)、ポリイミド(PI)など多種素材に対応可能で、建材や各種工程紙などに広く活用されています。用途に応じたデザインや機能の選択が可能です。


今回の記事が、皆さまの製品開発や課題解決のヒントになれば幸いです。
「この素材にもエンボス加工できる?」「○○の機能性を高めたい」などのご相談もお気軽にお寄せください。
みなさまのご参考になれば幸いです。
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