公開日:2023/3/14
最終更新日:2025/12/24

エンボス加工は、フィルムやシート表面に微細な凹凸を形成することで、意匠性だけでなく、摩擦・剥離・光学特性といった表面性能を制御できる加工技術です。
近年では、包装用途にとどまらず、粘着・建材・電子材料・工業用途など、工程や材料を変更せずに製品性能を向上・変更する方法としてエンボス加工を活用するケースが増えています。
摩擦係数の最適化や剥離性の安定化といった現場の課題に対し、実践的な性能設計手法を解説します。
エンボス加工とは、金属製のエンボスロール(金型)を用い、フィルムやシート表面に凹凸形状を加熱・加圧によって転写する加工技術です。
凹凸の高さ・形状・ピッチ・配列を設計することで、表面特性をコントロールできます。
エンボス加工の基本的な仕組みや用途全体については、以下の記事で詳しく解説しています。

エンボス加工により、表面の接触状態が変化し、摩擦係数を調整できます。
・凹凸により実効接触面積を低減し、滑り性を向上
・柄形状によっては、方向性を持たせた摩擦制御も可能
・フィルム同士・金属・ゴムなど相手材に応じた調整が可能
搬送工程や自動貼付工程において、密着防止・作業性向上に寄与します。


粘着剤や樹脂と接触する用途では、エンボスフィルムにより剥離性を調整できます。
そのため、下記のような用途で使用されています。
・凹凸構造による接触面積の低減
・剥離力の重軽調整
・粘着樹脂にフィルムの凹凸形状を転写しブロッキング防止
・シリコンや離型剤を使わず、構造で剥離性を確保
近年は、シリコンフリー・モノマテリアル設計を求める用途で、エンボスフィルムの価値が高まっています。

エンボスフィルムは、その柄のバリュエーションで、視覚・触感を豊かにすることができます。
・マット柄、梨地、ダイヤ柄、木目調など多彩な表現
・高級感の演出
・製品の差別化・ブランド価値向上
意匠性と機能性を同時に付与できる点は、エンボス加工の大きな特長です。
フィルム単体でも、樹脂に見た目・触感を転写する形でも使用できます。



エンボスフィルムは、光の反射・透過・拡散挙動にも影響を与えます。
・凹凸による乱反射でグレアを低減
・均一な光拡散による視認性向上
・マット調・落ち着いた外観の付与
ディスプレイ周辺材料や建材用途など、機能と意匠を両立した設計が可能です。
エンボスフィルムの性能は、以下の要素によって変化します。
・凹凸の深さ・高さ
・表面粗さ(Raなど)
・ピッチ・配列
・形状(点状・線状・連続模様など)
用途に応じて適切なパターンを選定・設計することが重要です。
同じ金型でも、フィルム素材が異なれば得られる性能は変化します。(下記、例)
・PET、PC、PIなどの高剛性フィルム
・OPP、CPPなどの軟質フィルム
・複層フィルム
・表面コーティングの有無
使用目的・用途や必要な耐熱性などから、適切な素材を選定する必要があります。
エンボス加工は、単なる模様付けだけではなく、
表面性能を物理構造で設計する加工技術です。
・摩擦
・剥離
・光学特性
・意匠性
これらを薬剤やコーティングに頼らず実現できる点は、環境配慮・リサイクル設計の観点からも注目されています。
エンボス加工を施したフィルムの特徴や用途、使い方については、以下の記事で詳しく解説しています。
本記事とあわせて読むことで、技術理解と実用イメージをより具体化できます。
エンボス加工は、
・表面に凹凸を形成し
・その構造によって性能を制御する
非常にシンプルでありながら奥の深い技術です。
意匠性だけでなく、摩擦・剥離・光学特性といった機能面に着目することで、
エンボス加工は製品価値を高める有効な手段となります。
用途や課題に応じて、エンボス形状・材料・加工条件を組み合わせることが、最適な性能設計につながります。
本記事は、合同樹脂工業株式会社 が執筆しています。
合同樹脂工業は、フィルムへエンボス加工を専門に行う加工メーカーです。
独自工法のハードエンボス加工により、高剛性フィルム(PET、PC、PIなど)にも安定した凹凸形状を付与できる技術を強みとしています。
・意匠性・触感
・摩擦特性の制御
・剥離性・離型性の設計
・光拡散・マット調
など、表面性能を設計するエンボス加工に半世紀にわたり取り組んできました。
本ブログでは、現場での加工経験や技術的知見をもとに、
技術者・開発担当の方に向けた情報を発信しています。
エンボス加工の性能設計や材料適性についてのご相談がありましたら、
是非お気軽にお問い合わせください。
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